2011年2月2日水曜日

管啓次郎著『斜線の旅』、第62回読売文学賞(随筆・紀行賞)受賞!

管啓次郎著『斜線の旅』(インスクリプト、2009年12月)が、第62回読売文学賞(随筆・紀行賞)を受賞いたしました。

松浦寿輝さんの選評(「読売新聞」2011年2月1日付掲載)から:

(…)偶然の出会い、予期せぬ道草、記憶の不意の甦り、湧出する詩想……豊かな小事件に満たされた、長短様々な旅のゆるやかな時間。それを記述する管さんのしなやかな散文は、健康な呼吸の拍を刻みつつ、軽いフットワークで絶えず移動し、浮遊し、越境しつづける。この快い運動感がすばらしい。「斜線の旅」とは、縦横の格子状に切り分けられた世界の秩序をいったんご破算にして、不意に斜めに逸脱することだ。(…)旅の名に値する旅とは、実はことごとくそうした体験のことではないのか。(…)ポリネシアの島嶼群への旅を繰り返す管さんの魂と身体は、この「太平洋の大三角形」を比類のない「平滑空間」として体験しているのだ。紀行文学の一傑作がここにある。




受賞を受けての管さんの言葉。ブログ「Mon pays natal」から:

(…)とりわけうれしいのは、この部門の昨年の受賞作が堀江敏幸さんの『正弦曲線』だということ、そして今年の「研究・翻訳賞」が野崎歓さんの『異邦の香り』だということ。二人の友人たちと、こんなかたちでそれぞれの仕事の一区切りを祝うことができるのは、ほんとうに幸運なことです。
そして二人の名前を出すと、もう一人の親友のことを思い出さずにはいられません。一昨年の夏に亡くなった編集者の津田新吾。彼のお別れの会で彼を送り出す言葉を述べたのが、野崎さん、堀江さん、ぼくでした。送り出した、たしかに、でもどこにむかって? その後もぼくらはそれぞれがそれぞれの本の島に住み、島々は勝手に可視不可視の火山活動を続けています。その島と島のあいだの海のどこかで、ジュゴンのように、ジュゴンとして、彼はいまもぷかぷかと浮かびまどろんでいるような気がします。
本は物として存在するけれど、その本質は想像的なもの。そして想像の世界には、時間の隔てもなく空間の分離もありません。だったらジュゴンのためにわざと熱帯の海岸に本を置き忘れてくるのも、意味のないことではないでしょう。ジュゴンは永遠にまどろみながら、砂の上の本を、文字ではなく気配で読みとってくれるかもしれません。餌だと思って食べてしまうのでなければ!

http://monpaysnatal.blogspot.com/2011/02/blog-post_01.html

その他の部門の受賞作についてはこちら:
http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20110202-OYT8T00331.htm

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受賞に当たって新しい帯を作成いたしました(右端)。従前の帯とは用紙も変えています。